断章のグリム 特別企画
「白雪姫」のアナグラムは偶然が生んだものだった!?

松坂 最初に使う童話を決めて話を作っていくんでしょうか。それともテーマがあって童話を決めていくんでしょうか。
甲田 両方ある、といった形になりますか。シリーズを始めた時に使えそうな童話のピックアップはしてたんですよね。
松坂 『人魚姫』は神狩屋用に用意してあるのかな、とか、『白雪姫』は初めから最終章用に選んであったのかな、とか。
和田 実はファンの人も、『白雪姫』がラストの童話じゃないかって想定してたんですよね。“白”野、“雪”乃、颯“姫”と、メインの登場人物に“白雪姫”の名前が入っているんで。1巻の時から言われてましたね。
甲田 私はどっちでもよかったんですけどね(一同笑)。
コミック担当 アナグラム的に入れたってわけじゃなかったんですね。
甲田 違いますね。たまたまです。
和田 僕もネットで見てあとから気が付きまして、「ああなるほど。これはそういうつもりだった」と言い張るほうがいいだろうなって(笑)。
甲田 まあ、そういう偶然が起こる話の方が出来はいいですね。出来がいい話ほど妙な偶然が起きます。今まで想定していなかったものが組み合うとか。実は話に取り掛かる時に、ラストの展開はプロットに書いてないことが多かったんです。プロットを見ると「クライマックス」とか素っ気なく書かれているだけで(一同笑)、実はどんなシーンにするか考えてないことが多いんですよね。書いていったものが積み上がって、最後のシーンでカチッと組み合わさる時が一番楽しいんです。
松坂 先ほど「プロットを守らない」というお話があったんですが、配役が替わってしまったりとか、決めないままスタートしたりとか、そういうこともおありだったんでしょうか。
甲田 ありますあります。何となくは決めていくんですけど、書いてるうちに「あれ、この解釈は違うぞ」って自分で思って解釈を組み替えたりとか。
松坂 『人魚姫』から上下巻構成が多くなるんですが、上巻の時には下巻の内容はどれくらい決まっているんでしょうか。
甲田 全然。上下巻になっている時ほど、内容が決まっていないんです(一同笑)。ほぼ見切り発車で上巻を書いて、という形が多いですね。だいたい私は締切を守らないので、締切に追われてそれをやるんです。
松坂 上巻で書いてしまったから下巻ではもう変えられない(笑)。じゃあご自身でまるで思いもよらない結末になったりしたりすることも……。
甲田 あったはずです。書いてるうちに自分の頭の中で、全要素が裁断されて組み直されるてるので、どれが最初から決めて始めたものか、記憶があまりないんですよね。
和田 上下に分かれている時に上巻で、言い方はあれですが“犯人”がわからない時に、僕が「犯人は誰だと思います」って言うと、もしもそのとおりだと変えたくなるんだと思うんですよ(笑)。「読者も同じことを考えてるんじゃないか」と思うと、それをひっくり返したくなるんじゃないでしょうか。
コミック担当 ネットでファンが推理したものが、もし伝わったりすると……。
甲田 私自身は見ないんですけど、担当さんがたまにネットでの評判とか推理を送ってくることがありまして……。
和田 「こういう風に推理されてますよ」って。そうすると性格上、そのとおりにするのがイヤだろうなと思って(笑)。
甲田 うーん(笑)。
コミック担当 それは担当編集と作家さんの駆け引き、みたいなものですね(笑)。