断章のグリム 特別企画
ホラーではなくファンタジー

松坂 これだけ怖いシーンがあっても「ホラーではない」とおっしゃっていたんですが、「怖がらせることが目的ではない」ということでしょうか。
甲田 怖がっていただけるならその方が(一同笑)。
松坂 確かに、『Missing』や『グリム』をホラーとは思っていないんですが。「怖い」っていうよりも、毎回クライマックスのシーンは夢中になって読んでしまいました。引き込まれるというか…。
コミック担当 松坂先生とは「泣けますよね」って言いながら読んでましたけど。
松坂 最初はお仕事と関係なく、読み終わった時にバーッと絵にしてしまいました。おそらくコミック担当が私に決まらなくても描いてたと思います。
コミック担当 眞衣子ちゃんの顔から××が出ている絵が届きましたね※13。他のキャラは普通の姿だったのに(笑)。
和田 編集者として、やはり「怖くしてね」という注文があるんですけど、“ホラー”とは言わないようにしてましたね。あくまでファンタジーを書いていただいているんだと言い張っていましたけど。
甲田 私に「ホラー方面の作家として書けば」と最初に薦めたのは編集者ですよね。
和田 うんうん、そうですね。Mさん※14ですよね。
甲田 ということはあれですか、応募作※15の『夜魔 罪科釣人奇譚』※16はホラーだと思われてた…?
和田 うん…う…ん、そうですね(笑)。多分僕たちはそうですよ。
甲田 あれは私がメルヘンだかファンタジーだと思って応募したんですが、その後長編を書く時「どうする?」って話になった時、「ホラー方面どうよ」って話をされたのがMさんでしたよね。確かその時お渡ししたプロットのひとつが『Missing』で、もうひとつが霊能バトルものみたいな。私はライトノベルのレーベルに応募したわけですから、バトルものとか必須なのかなあって思ってたんですけど。
松坂 『Missing』が終わったあとで、「今度はバトルもの」というお話にはならなかったんですか。
甲田 ならなかった…ですね。『Missing』でずっとやってましたから、基本溜まってくるアイデアメモもそっち系なわけで。ファンタジーもののアイデアがいくつかあっても、それは埋もれちゃってる状態で。
松坂 いつかはそういうジャンルのものも、着手したいとお考えですか?
甲田 自分の中でガチッとはまれば、そういったものもやってもいいかと思いますけど。
松坂 読んでみたいですね、ファンタジーの上にダークとかつくかもしれませんけど。
甲田 そもそも私がこれをメルヘンだと言っているのは、先ほど私のコアに怪談があるといった話と完全に繋がっていて、実話怪談とかをメルヘンの流れを汲むものだと思っているからなんです。昔のメルヘンや童話は、それこそ魔女とか悪魔とか妖精だというものが信じられていた土壌で語られていた話なので、怪談と同じ存在だったと思うんですよ。談話として語られていた当時は。そういうものがもう信じられない時代になって、口承文芸として残っているものは何かと言うと、それが実話怪談や都市伝説だと。だから昔から「メルヘン書いているんですよ」って言っているのですが。
コミック担当 文章も実際に聞いて語る怪談のようなものをイメージして書かれているんでしょうか。
甲田 そうですね。普通の音読は難しいかもしれませんけど、そういう抑揚を付けて、ここは流れるように、ここはゆっくりみたいな感じで、それらしく朗読するのに耐えられる文章にしたい、とは思っています。
コミック担当 CDドラマ※17もありましたが、朗読会などでも聴いてみたいですね。

《※13》眞衣子ちゃんの顔から××~▶ネタバレなので伏字ではあるが、『灰かぶり』クライマックスのグロテスクなシーン。
《※14》Mさん▶元・電撃文庫編集者。『Missing』スタート当時の担当でもある。
《※15》応募作▶第7回電撃ゲーム小説大賞(現・電撃小説大賞)。『夜魔 罪科釣人奇譚』は最終選考に残り、その文章力が高く評価された。
《※16》夜魔 罪科釣人奇譚▶『夜魔-奇-』(電撃文庫刊)に収録。『Missing』のキャラクターも登場する、連作短編集。
《※17》CDドラマ▶『断章のグリム 小人と靴屋』。音響監督と事前に「怖い音」「嫌な音」をヒアリングして、それを活かす形で100ページほどの原作が書き下ろされた。