これが「日本の民主主義」!

内容紹介

『これが「日本の民主主義」!』

池上彰 著

安保法制の強行採決、安倍政権による言論への圧力。
なぜ日本の民主主義はこうなったのか。

日米安保条約から原発政策、TPPまで、
過去を振り返りながら、
日本の民主主義のあるべき姿を池上彰が示す。

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はじめに

  二〇一五年九月、集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ、安保関連法が参議院で採決されました。国会周辺では連日反対デモが行われ、政府に対して国民の声に耳を傾けるように訴えましたが、国会議員の数は民意の表れとばかりに、十分な審議がないままの強行採決でした。

  いまや日本の借金は一〇〇〇兆円を超えています。借金返済のチャンスはあったにもかかわらず、選挙の度にうやむやにされて先送りされ、無駄使いを真剣に検証することもないまま、さらに借金を重ねてきた結果です。

  しかしこれらは、あらゆる決定を行ってきた、もしくは先送りしてきた政治家だけの責任ではありません。投票によって選ばれた彼らを、ちゃんと監視してこなかった国民にも責任があるといえるでしょう。

  「景気対策を行います」、「福祉を充実させます」、「増税はしません」。選挙の度に飛び交う魅力的な言葉。しかし、当選後の彼らの行動に国民が関心を示さなければ、彼らが政党や政治家自身にとって都合のいい判断に傾くのは、しかたがないことかもしれません。

  二〇一六年夏から、選挙権の年齢が一八歳まで引き下げられました。世界では一八歳からの選挙権が常識。二〇歳からという日本の制度は、世界では少数派でした。それだけ日本では若者を子ども扱いしていたということでしょう。

  その結果、「シルバー民主主義」なる言葉が生まれました。「シルバー」、つまり「高齢者のための民主主義」の意です。超高齢者社会の日本では高齢者の数が多く、しかも多くが投票に行くため、政治家に強い影響力を持つようになります。

  一方、若者の数は高齢者に比べて少ない上、そもそも投票率が低い状態が続いています。政治家も人の子。自分に投票してくれそうな人たちのための政策を考えがちになります。

  二〇一六年春、「保育園落ちた日本死ね!!!」というネットへの投稿の文章が社会を揺るがしました。日本の保育行政が遅れていることを痛烈に批判したものでした。

  若い世代の数は少なく、幼児期の子育ての期間は、けっして長くはない。いずれ人は老い、年金が心配になります。ならば保育にお金をかけるより、年金や高齢者医療にお金を注ぎ込んだほうが、選挙対策としては効果的。こんな状態が続いていれば、子育ては難しくなり、日本の少子化は止まりません。日本は緩やかに衰退の道を辿ります。

  戦後、大きく変わった日本の政治。国民は、「民主主義」なるものをアメリカから与えられたものの、十分に理解しないまま、次第に自己流の「民主主義」をつくり出していきます。その積み重ねの歴史の上に、いまがあります。政治はつねに前進しなくてはなりません。ときに国民の目が近いところに向いていれば、遠くを見渡す判断が必要です。国民の目をわざわざ近くに向けて、コントロールしていると思い込むような政治は不幸をもたらします。

  遅ればせながら一八歳からの選挙権が認められたことは、政治を変えるチャンスにもなりえます。若い有権者の数を増やし、その若者たちが投票に行くようになれば、政治家は若者を無視できなくなります。子育ての悩みにも耳を傾けようというものです。

  そして、政治を変えるには、まず過去を知ることが重要です。過去を知り、問題点も理解した上で、今後のことを考えましょう。この本が、そのために役立つことを願っています。

  この本では、一般的な通史での形式はやめ、安保法制や食の問題、原発政策、税制、メディアなど、テーマごとに政治の変遷を辿ることにしました。これらのテーマから戦後の日本の政治をふり返って見ることで、「日本の民主主義」の姿を知り、あらためて「民主主義」を考えるきっかけになるのではないかと考えたからです。ここに至るまで、どんな出来事があったのか。テーマごとに違った日本が見えてくるはずです。

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目次

  1. はじめに
  2. 第一章 日米安保条約から安保関連法まで
  3. 第二章 日本の食とTPP
  4. 第三章 日本の原発政策
  5. 第四章 税制の変遷と消費税
  6. 第五章 政治とメディア
  7. 第六章 五五年体制以後の連立政権
  8. 第七章 これからの日本の民主主義
  9. 戦後の首相
  10. おわりに
  11. 主要参考文献

著者略歴

池上彰(いけがみ・あきら)
フリージャーナリスト。1950年長野県松本市生まれ。
慶應義塾大学経済学部卒。1973年NHK入局。
記者として災害や事件、消費者問題などを担当し、
1974年から「NHK週刊こどもニュース」初代お父さん役を11年間続ける。
2005年にNHKを退職。
フリーランスの立場で、幅広く活動する。
『そうだったのか!朝鮮半島』、
『高校生からわかるイスラム世界』、
『海外で恥をかかない世界の新常識』など、
著書多数。名城大学教授。
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